中山七里さんの世界に首までつかった1か月でした。
文芸
「連続殺人鬼カエル男ふたたび」中山七里
「あんなのは人間のすることじゃない」「今さら寝ぼけたこと言ってんじゃねえ。人間だからあんなことをするんだ」

連続殺人鬼カエル男の続編。前作のキーパーソンである有働さゆりと深いかかわりを持つ御前崎教授の家が爆破され、現場にはカエル男の犯行を示唆する書置きが残されていた。
前作以上に残酷さを増すカエル男の犯行と、前作以上に冴えわたる渡瀬節。そして前作にはなかった生きながら処刑される人物が詳細に実況をする場面もあり、刑事小説としてのブラッシュアップを感じる。刑法第三十九条を発端とした復讐劇が予想外の方向に広げられ、事件の真相に思いもよらない人物を関わらせるのは、さすが「どんでん返しの帝王」。
電子巻末には中山作品の人物相関図が掲載されている。今作の次は「笑う淑女」に飛ぶらしい。完全完結までの道のりは容易でない。他作品の主要人物としては、さゆりの弁護人として御子柴礼司が出演。古手川に示唆を与える重要な役割を担っている。
「嗤う淑女」中山七里
買い物依存症のOL、家族への不満を募らせる息子、夫が働かず金銭的に追い詰められている主婦、困りごとを抱えている人々のもとに現れ、的確なアドバイスをする蒲生美智留。彼女と関わった人はみな、奈落の底へと落ちていく。

カエル男と繋がるのは「嗤う淑女 二人」のみだが、全部読まないと本シリーズのおもしろさにたどり着けなそうなので。
社会時事の中でも狭い界隈の、だがいつの時代も普遍に存在する問題がドラマ仕立てにされており、父親からの暴力、行員の横領、キレる子ども、夫のリストラ等がテーマとなっていた。
全5作の連作短編で、悩みを抱えた人々が美智留という謎の女性の介在により心を狂わされ、取り返しのつかない結末へと導かれていく、というのがパターン。読み心地(という造語があることを知った)は軽く、テレビでよくある再現VTRを見ている感覚。
美智留が自己の利益だけを求める道徳心のない悪女であることは理解したが、話術と雰囲気だけで全員が全員彼女に心酔する心理は理解できなかった。私が信じやすい人ではないからなのか。世の中にはすがることに躊躇のない人もいる。そういう人をかぎ分ける能力の高さこそが美智留を悪女たらしめている能力の一つなのだろう。
サイコパスの狡猾さ、残酷さがぞんぶんに味わえる作品。遠く離れた場所から覗き見るだけなら、他人の不幸は蜜の味。他作品の主要人物としては警視庁捜査一課の麻生、美智留の弁護士役として宝来が出演する。
「ふたたび嗤う淑女」中山七里
シリーズ2作目。無罪放免となった美智留がターゲットとしたのは国会議員。資金調達を担うNPO法人、大量票を産出する宗教法人、後援会会長、有能な議員秘書といった政治家の四肢を一つひとつ断ち切り、次第に追い詰めていく。

政治への関心が高まる世情とはいえ、国会議員と圧力団体との関係は一般には分かりづらい。興味のある方はエンタメのフィルターを通し描かれた今作で、その世界の片鱗を覗いてみてはいかがだろうか。普段は表に出ない議員秘書の苦労は、もっと世間に認知されるべき。
高く昇り詰めるほど、そこから落ちたときに穿たれる絶望の穴は深くなる。そのことに至上の喜びを感じる美知留は各々の野心の火種に油を注ぎ、億単位の詐欺で奈落に落としていく。前作とは違い登場人物が欲望に満ちた者ばかりだからか同情はさほど感じられず、奇跡かな、美智留がダークヒーローのような魅力を放っていた、途中までは。最後の最後でまたしても何だってえ?! となりはするが、言われてみれば途中の違和感も腑に落ちる。そんな落とし方をするのだ、中山七里という作家は。
詐欺の手法が前作より明確になったことで、悪女としての説得力が増した美知留。彼女を追うのは前作に続き、警視庁捜査一課の麻生班。「総理にされた男」「月光のスティグマ」とリンクしており、国民党の真垣統一郎、是枝孝政が名前だけ登場。
「嗤う淑女 二人」中山七里
「この世にはな、どんな医学知識や捜査経験を総動員しても理解できない悪っていうのが存在するんだ。」

ホテルでの大量毒殺、ツアーバスの爆破、フィットネスジムの爆破、学校の爆破、日本のあちこちで突如起こり始めたテロめいた事件。捜査線上にはカエル男事件の犯人として逃亡中の有働さゆりの関与が浮上する。
このシリーズの面白さは現代の社会問題を骨子としながら、蒲生みちるというサイコパスに一人の人間が篭絡され、周囲を巻き込みながら破滅していく過程のエンターテイメント性にあると思っていたのだが、3作目にしてぼやけてしまった。芋づる式に読み手を増やす(私も芋釣られた一人)クロスオーバーの手法を多用していることから著者が根っからの商業作家であることは理解するが、多作になるほどシリーズの特色が大事になるだろうに、テーマを逸脱してまでなぜ有働さゆりを登場させた? せめて彼女でなければならない確固たる意義を感じさせてほしかった。
ということで、無難に盛り上げてはくれるがシリーズとしては及第点以下。きれいに締まらなかった気分ではあるが、これで嗤う淑女既刊分を読破。私と同じようにカエル男を追ってきた人は2作目読まなくてもいいけど、1作目は必ず読むこと。事件捜査は警視庁捜査一課の桐島、宮間、葛城、宮藤が中心。古手川、御子柴も少しだけ登場しておいしいところを持っていく。
「連続殺人鬼カエル男 完結編」中山七里
凄惨な殺害方法と、稚拙な犯行声明文で世間を震撼させた「カエル男連続猟奇殺人事件」。事件のキーマンである有働さゆりは医療刑務所から脱走し、行方知れずのままだった――。その頃、精神疾患を抱える殺人犯を無罪にした人権派弁護士が何者かに殺害される事件が発生。遺体のそばには、あの稚拙な犯行声明文が残されていた。捜査一課の渡瀬と古手川はカエル男の犯行を視野に入れて捜査を進めるも人権派弁護士の殺害は続く。これまでと異なる動きを見せるカエル男に翻弄される渡瀬は、ある人物からひとつの提案を受け……。(宝島社作品紹介)

嗤う淑女シリーズを経て古手川たちのもとへと戻ってきたさゆりの解離性同一性障害は悪化の一途をたどっており、痛い、辛い、怖いの3点揃ったシリーズ史上最も残忍な方法で命を奪っていく。猟奇事件好きとしては本覚醒した殺人鬼さゆりの活躍をもっと見たいと思ってしまうが、「完結編」とタイトルで言い切っているとおり、それは永遠に叶わぬ願いであった。
刑法第39条については必要性を認めつつも、その乱用により法廷が真偽を問う場から逸脱してしまう問題が強調して描かれており、御子柴が吐き捨てた「刑法第三十九条を切り札に使うような無能」というセリフが強く印象に残っている。結局のところ、すべてはここに集約されているような気がする。
シリーズの途中で投げ出すことが多い私であるが、カエル男は最初から最後まで読み通すことができた。それだけ読みやすかったということなのだろう。
「テミスの剣」中山七里
浦和署に勤務していた若き渡瀬が当事者となり、最悪の結末を迎えた冤罪事件。その事件から23年後、出所した真犯人が何者かによって惨殺された。冤罪事件の粛清から一人生き残り、埼玉県警本部に移動していた渡瀬は冤罪事件との関連性を指摘するも、誰の協力を得ることもできずにいた。二度と間違えることはしないと誓った渡瀬は過去と現在を結び付けるため、孤独な戦いを始める。

渡瀬ファン必読の一冊。現在の洽覧深識な彼を形成するに至ったいたましい冤罪事件を通し、正義の担い手に問いを投げかける社会派ミステリー。
いや、すごいな。幾重にも重なっている謎を紐解く伏線配置の妙もそうなのだが、警察、検察、裁判官それぞれを絡み合わせた人間ドラマの完成度が高すぎる。
誰しもが保身に走る姿は誇張ではなく、ある程度は現実なのだと思う。不安と不信が支配する中、真相を求める渡瀬の誠実さだけを拠り所にして物語は展開していく。後半、刑事として成長した渡瀬が裏ボスを追い詰め、想定外の事実が発覚するクライマックスではゾクゾクが止まらなかった。
正義の名のもとに真実を後付けすることが許されるのなら、何をもって正義と成すのか。正義を執行する人間に必要なものは何なのか、こういう作品は思考を深めるきっかけにもなっていい。私なんて普段なんも考えていないから余計に。
渡瀬といえば、事件に熱中するあまり妻から三下り半を突きつけられていたことが発覚。刑事としては敏腕だが、夫としては最悪の男であった。その他の主要人物としては、部下の古手川が少しだけ出演、麻生班・犬養との合同捜査に赴く様子が描かれている。また、文藝春秋発刊「静おばあちゃん」シリーズの高遠寺 静も重要人物として深く関わっており、葛城と円もゲスト出演する。
「方舟」夕木春央
友人と従兄と山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った家族と地下建築「方舟」で夜を過ごすことになった。翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれ、水が流入しはじめた。いずれ「方舟」は水没する。そんな矢先に殺人が起こった。だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。タイムリミットまでおよそ1週間。生贄には、その犯人がなるべきだ。――犯人以外の全員が、そう思った。(講談社作品紹介)

衝撃で力が抜けた。世間で評判になるのもうなずける見事な反転劇。
ただ、期待が大きすぎたのか謎解きパートでは少々たいくつを感じた。最期の瞬間にすべてをかけている小説はカタルシスを得るまでが長くて・・・まあそれは好みの問題だと思うが、登場人物たちの掘り下げが浅く、人間ドラマに希薄さを感じたことが大きな要因かも。もともと謎解き自体を好む質ではないので、麻衣と主人公、探偵役として動き回る翔太郎の補足エピソードなく進む物語に入り込むのは難しかった。
自分が同じ状況に陥ったら、犯人ほどクレバーに立ち回れるだろうか? いや絶対無理だなあ。
「爆弾」呉勝浩
東京中に爆弾。怪物級ミステリー!
自称・スズキタゴサク。取調室に捕らわれた冴えない男が、突如「十時に爆発があります」と予言した。直後、秋葉原の廃ビルが爆発。爆破は三度、続くと言う。ただの“霊感”だと嘯くタゴサクに、警視庁特殊犯係の類家は情報を引き出すべく知能戦を挑む。炎上する東京。拡散する悪意を前に、正義は守れるか。(amazon作品紹介)

10月に映画化、「君が獣になる前に」のさの隆さん作画で漫画化もされている作品。すごく面白かった。密室の取調室で展開される静かな心理戦と爆弾事件による大規模な混乱が交互に描かれていて、リアルタイムで進行する緊迫感が読者を物語の渦中へと引き込んでいく。自分がその現場に居合わせているかのような臨場感がページをめくる手を止めさせず、夜通しで読了してしまうほどの没入感を味わった。
正体も思惑も不明なタゴサクの回りくどい独白に込められた断片的な情報を類家が丁寧に読み解くことで、徐々に明らかとなる凶行の理由。その過程で浮かび上がるのは、選ばれない人が抱える深い絶望であった。最期までヒールとしての姿勢を崩さなかったタゴサクだったが、残る余韻は物悲しい。
現在と過去が交錯していく中で人間ドラマが紡がれ、事件の真相が明かされていく構成と、ゲーム的な駆け引きによる爽快感が充実した見事な作品だった。会話で物語が進んでいくし、キャラクターも立っていて読みやすい。日ごろ読書をしない人へのおすすめ作品としてラインナップしたい。
「口訳 古事記」町田康

町田節とも言えるユーモアを交えた言葉で生き生きと描かれていて、冒頭の「この二箇所はちょうどはまる感じです」で永遠に笑える。真面目な内容に笑いのエッセンスが加わることで、日本の起源が語られる壮大な物語が神話の世界を舞台にした、まるでコント。日本最古の物語が自然と現代の感性に溶け込み、神々が驚くほど身近に感じられた。めちゃくちゃ面白い。
面白おかしくアレンジしながらも基本原典には忠実なようで、昔話だと思っていた物語が実は『古事記』の一節だったり、天津神と国津神の関係性や皇孫の寿命の意味だったり、日本列島誕生の由来など改めて学べた点も多かった。
アバウトに国造りする神々の姿を見ていたら、小さなことで悩んでいるのがアホらしくなって何か元気出た。これも神様の力のおかげなのかな?
マンガ
夏休みはヤンマガで楽しもう
景気が悪くなる前は3巻まで無料配布していたくらい、器の大きい講談社。今年もおうち時間を楽しむ民に人気作品の無料開放を大量に投下してくれました。
◆まずは「祝・ヤンマガWEB5周年&リニューアル記念!ヤンマガレジェンド作品 全話無料!」

夏休みとはいえ全部読めたのは彼岸島だけ。

ご長寿すぎて現在なぜこのような状況に陥っているのか見失っていたので、振り返りができてよかったです。そうでした、雅の息子が5人いる話から今の状況になっていたのでした。ボスを倒すために中ボスを撃破していくという少年漫画の王道展開を夢も希望もなく50巻ほど進んできましたが、ゆかぽんや吸血鬼の小春が加わったころから二手に分かれてのチーム戦が可能となったり、明💛小春の可能性が見え隠れしたり、もはや先生も悪ふざけを隠そうとしなくなったり、物語の幅は宇宙が膨張するがごとく広がり続け、連載20年を突破してもワクワク感が枯渇する気配をまったく見せません。目指せ100巻。
◆8/26日からは「ヤンマガ45周年記念、夏の終わりの大盤振る舞い」として、現在連載中の人気作品が全巻開放されました。マジふとっぱら!
ねずみの初恋

ねずみちゃんのピュアな乙女心と無垢な残虐性のギャップに魅入られてしまった人が続出したようで、開始早々からヤンマガの第一線を走る人気作となりました。前作の「影霧街」よりはマイルドで読みやすいです。見開きを多用したマンガ的な情緒表現がすばらしいなと思っていたのですが、youtubeで著者部屋の本棚に花村萬月が並んでいるのを拝見して妙に納得しました。
ゴールデンドロップ

旧日本軍が残した麻薬を巡る、裏社会サクセスストーリー。とことんスリル&バイオレンスで、こちらもマジ面白い。
アマチュアビジランテ

これも面白い。もうヤンマガ作品全部面白いんだわ。
満州アヘンスクワッド

彼岸島同様、ご長寿&最近隔週掲載で流れを見失いがちだったので振り返り的に読めてよかったです。正直、物語は停滞を感じていますが、真阿片をキめたときの「んぱーっ」ていう表情が見たくて読んでいるところはあります。あのヘブン顔が放つ爽快感は漫画太郎に通じるものがある。
上記の他、「ファブル(1st)」「みょーちゃん先生はかく語りき」「だれでも抱けるキミが好き」「パリピ孔明」「税金で買った本」も対象でした。ほんとね、ヤンマガは懐の深い神サービスをよくしてくれるので、メルマガ登録おすすめです。
続巻と新刊
今月はBL月刊だったので一般コミックは少しだけです。
綺麗な君に殺されたい(2)

1巻では聖の気を引くために嘘を重ねるかまってちゃん(ミュンヒハウゼン症候群?)が登場しましたが、2巻では死んだ彼氏を自分の都合のいいように解釈する夢子ちゃんがターゲットとなりました。虚構の中に生きている人の魂が一の大好物なようで、食事のあとの恍惚とした表情は1巻のそれを超えてきました。この作品ちるちるにあるんですよね、一応。天鷲 一の正体も私たちが言うところの悪魔とはっきり明示され、いよいよ芦花公園さんらしさが感じられる展開になってきました。3巻も楽しみです。
メイドインアビス(13)

竹書房の日に買うと決めている作品。つまり前巻から1年が経過しており、当然内容は覚えていない。今後は買うだけ買って、完結後にまとめて読むことにします。
8/1は竹書房の日(BL)
年に1度のお楽しみ「竹書房の日」。一般書は70%OFFなのにBLは50%OFFにしかなってくれませんでした。BLは安くせずとも稼げる媒体ということなのでしょう。せちがらい世の中です。とはいえ、まめに読んでいるのでkindle、シーモア、レンタで購入した作品の買いなおしがほとんど。

読んでよかった1作目「穴のあくほど」

いや~この作品は癖に刺さりました。リアルで男の人の尻穴を観察したことのある人なら一度や二度や三度、違和感を覚えたことがあると思うのです。毛がないのはおかしいぞ、くるくるーって紙が巻き込まれている毛がないのはおかしいぞって。
そんなBL界隈男子のすべすべ桃尻に対する反抗心をスーっと浄化してくれる作品でした。尻毛びっしりです。体毛が薄いと思われている攻めの尻穴にも、うっすらと毛があります。
別に体毛が好きというわけではないのですが、体毛に恥じらいを感じる女性の羞恥心と見てはいけないものを見てしまった背徳感が共鳴すると言いますか、当社比ではないよりはあったほうがリアリティもスケベ度も増す気がしています。なんだか毛に終始した感想になってしまいましたが、もちろん物語も文句なしの◎でした。
読んでよかった2作目「聞いて、俺の恥ずかしい音」

大好きな吾瀬わぎもこ先生の、これまた癖に刺さる物語。おしっこの音を聞かれると興奮してしまうという稀有な変態が登場します。不憫なやつだなあ、と思いつつ変態行為に付き合う懐の深い攻めと、自分の性癖に正直な受けのやり取りが、めちゃくちゃほのぼの。正々堂々と「もう一度、俺のおしっこの音を聞いてくれないか」とお願いする受けの潔さ、性への探求心に素直な姿勢は見習いたいところです。
一般漫画ですが、「バトル・ロワイアル」でも男の気を引くためにおもらししている女子がいました。おもらしって実は最良のコミュニケーションツールなのかもしれません。クスっと笑えてドキっとキュンする、何度も読み返し確定の最上級ラブコメでした。
竹書房じゃないBLもそこそこ買いました
鷹虎くんとオメガたち(2)

2巻では社会にでたΩクラスのメンバーたちのその後が描かれていました。メインはΩの地位向上を目指し邁進する亀山と、起業し順風満帆な鷹虎くん。流されるように付き合い始めた二人ですが、社会を変えるか、自分が合わせるか、方向性は違いますが、確固たる自己を持ち行動する彼らが引かれあうのは必然でした。
α気質を持つ鷹虎くんとはいえ、ΩはΩ。油断していたところでα社会の洗礼をダイレクトに受け、ストレスが積み重なっていきます。そのあおりを受ける亀山とのすれ違い、またΩそれぞれの個性が生き生きと描かれていて、この先どのように展開していくのか期待で次巻が待ちきれません。ただね、朝田先生だからこそ、このまま亀山が成功するとは思えないんです。何かが起きないことを祈ってしまいます。
社長Ω、ヒモαを拾う

Ωが強いオメガバースは安心して読めていいですよね。自身のバース性を否定され、αとして生きることを強要されてきた社長Ωが、偶然出会ったニートαにありのままの自分を肯定され、お互い引かれ合っていく物語です。受けの社長さんがΩ性を前向きに受け入れ、むしろ積極的にΩとして抱かれたいとモンモンしちゃう姿が新鮮。そうです、時代はダイバーシティにシフトしているのです。αを否定してΩになりたい人がいたっていいじゃない。
社畜おじさん触手を買う

宇宙植物に気に入られてしまった社畜が主人公。ひたすら触手攻めで、人間との本番行為はほぼありませんでした。
体液を求められて触手にめちゃくちゃにされてしまう内容はとても好ましかったのですが、研究員に女性を配置されるのは辛い。モブであればまだやり過ごせましたが、ちゃんとしたサブなんです。
感受性の強い人ほど発生するのが共感性羞恥。私は家の壁とか天井のシミとして陰ながら覗き見たいのであって、あからさまに観察したいわけではないし、一切認識されたくない脳内おじさんです。女攻めの作品はいいんですよ、女性が男性をそういう状態に持っていく過程を含め楽しむものですから。でもこれはBLじゃないですか。どのような立ち位置であれ、スケベに女性を絡ませてほしくない。主人公があられもない格好で息も絶え絶えな姿を冷静に観察する女性、この構図に慣れる日は地球が終わる日が来てもこないと思います。
特級αの愛したΩ

ある出来事を理由に離れ離れになっていた親友同士が10年後に再会し、関係を再構築していく物語です。Ωが不利な社会という正当なオメガバースを踏襲しながらも、過去のトラウマからΩ機能が正常に働かなくなってしまうという設定の繊細さが絵柄と共鳴して、優しい世界観を創り出していました。
ですが、これも上記と同じ理由で研究員に女性を配置されると、どうしても物語に入り込めません。それが大丈夫であれば文句なしの感動作として楽しむことができるはずです。
東京戦慄奇譚(3)

BLホラー作品集の3作目。咲本﨑先生の美麗な表紙がぴったりの、幻想的でシリアスな物語が集録されています。特に印象に残ったのは、ストーカーに惨殺された恋人が毎夏戻ってくる「業夏の螺旋」、愛する人を黒魔術で蘇らせる「アニマ・ヴィータ」、同級生の秘密を描く「半夜のフタオモテ」。ホラーとBLの高い親和性を実感いたします。
魔女の犬(8)分冊版

夏美が過去に経験した壮絶な別れが描かれていました。胸の底に閉じ込めていた感情に答えを出した啓悟の言葉で、なぜ彼に引かれたのか理解した夏美。身体も癒え、次巻からはいよいよ戦闘再開です。ただ欲を言えば! もっとひんぱんに魔力供給してほしい。
