Cult of the Lamb(カルトオブザラム)日記6のつづき
※カルトオブザラムのゲーム日記、だったのですがゲーム内容を基にした二次創作の小説風にしてしまいました。※設定を想像で補完しているところがあります。
※主人公の性格設定は見た目は子ども、中身はジジイです。
墓所に咲く花、再び歩む者

夕暮れの影が伸びるたび、今日という日は静かに終わりへと傾いていく。
教団を立ち上げ、その営みを幾度も繰り返すうちに、信者たちは年を重ね、やがて誰もが天へ昇る日を待つ身となった。
かつて穴を掘り、最初の信者を埋葬した場所は、一緒に植えた種が芽吹き、四季折々の花が咲き誇る美しい墓所へと姿を変えた。
今は我ひとりがそこを訪れるのみだが、いずれ墓石を建てることができれば、信者たちも交代で日参するようになるだろう。
夜闇の森から連れ帰ったヴァレファール。
長らく共に過ごした彼もまた、他の者と同じように年老い、信仰にすべてを捧げた生を終え、神のもとへと旅立った。
だが、ちょっと待つがよい。
キサマは待て。
我が作業に戻るよう促したとき、舌打ちをしたことがあったな?
精魂込めて彫り上げた彫刻を見て「こんなものか」と言ったこともあった。
我は少し、いや大いに傷ついた!

その不遜な態度を矯正する前に来世への希望を抱くなど、十万年早い!

今一度よみがえり、我が使役に応えてみせよ!
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待ち受けし死の神の名において、子羊が命じる
時の輪転よ、ただちに動きを止め逆巻くのだ
12の翼煌めく宵の明星に魅せられし彼の者を
明けの明星たる我のもとへと呼び戻せ!!

空間が歪み、現世と常世がまじりあう奇妙な感覚が教会堂を包む。
魔方陣の中央がゆらぎ、地に波紋が広がった次の瞬間、死の泉に沈んでいたヴァレファールがゆっくりと浮かび上がった。
ふわりと地に降り立つと、一瞬の静けさののち、割れんばかりの歓声が沸き起こる。
「ふう、成功だ」
だが、ヴァレファールの様子がどこかおかしい。
真っ赤な目を見開いたまま、まばたき一つせず、口からはよだれが絶え間なく垂れ落ちている。
緩慢ながら落ち着きなく体を動かす彼に、異常を察した信者たちは大きく距離を取っており、今にも逃げ出しそうだ。

どうやら呪いを受け、ゾンビーとなってしまったらしい。
他の信者を食い荒らす前に治療すれば問題はない、多分。
急ぎ治療所へ運び薬を処方すると、正気を取り戻したヴァレファールは怪訝な顔でこちらを見た。
「子羊様? 私は確か、天寿をまっとうしたはずですが・・・」
「うむ。蘇生の儀式を行った。新しき教義ゆえ治験体となる者を探していたのだが、死に返る精神への負荷を考えると、軽々には行えなくてな。
図太いところがあるお主であれば、実存の揺らぎにも耐えうるだろうと思ったのだよ」
「そうですか。よくわかりませんが、お役に立てたのであれば光栄です」
もっともらしい理由を説明すると、ヴァレファールは掛布団を畳みながら、なまった体を慣らすようにポキポキと首の骨を鳴らした。
「見たところ体調は万全なようだな。
よし、早速であるが、いま教団には肉が足りないのだ。
宣教へ行ってくれるか」
生前、性根を叩きなおすために激励し続けたおかげで、ヴァレファールは使徒レベルにまで信仰心を高めていた。
彼ほど信仰心が高い信者は数えるほどしかいない。
認めたくはないが、まぎれもなくわが教団にとって欠かせぬ人物ゆえに、蘇生したというのが真実である。
宿泊テントや交易品を背負い、外界に続く道へと向かうヴァレファール。
蘇生早々の長旅、さすがに一声も掛けぬのは非情すぎるか。
石段を駆け上がり、今にも出発しそうな彼に声を掛けた。
「ヴァレファールよ、気を付けてゆくのだぞ。
もし、力及ばず倒れたとしても、何度でも呼び戻すゆえ、安心してあの世へ行くがよい」

我が笑顔で大きく手を振ると、ますます怪訝な顔をしたのち、苦笑いを浮かべながら手を上げ返し、魔方陣の中へと飛び込んでいった。
いやマジごめんて
蘇生したヴァレファールは無事、宣教へと旅立った。
とはいえ——冷静に考えれば、天寿を全うした者を呼び戻すなど、軽率な行いだったのかもしれない。
信者たちは喜んでいたように見えたが、自然の摂理に逆らう行為を望まぬ者もいるはずだ。
もし、ヴァレファール自身がそうだったとしたら?
内心に募った不満が、やがて信者たちへ伝播する可能性も否定できない。
「教祖様」
通りがかった我を見た信者が祈りの手を止め、呼びかけてきた。
「ああ、グレユルトレか。今日も息災なようだな。
兄の様子はどうだ? 困りごとなどはないか?」
「ありがとうございます。教祖様にはいつも気を配っていただき、兄ともどもとても感謝しております。
そのことについてなのですが、わたしを招き入れてくださったことを、うれしいとお伝えしていましたでしょうか?」
自分でも気づかぬうちに不安気な表情をしていたのかもしれない。
耳を傾けると、入信の感謝とともに、私を励ます温かい言葉が次々と述べられていく。

知らず目が潤み、グレユルトレの姿が霞んだ。
「教祖様、大丈夫ですか?」
目頭を押さえる私を見て、彼は焦りを含んだ声で問いかけてきた。
「ああ、大事ない。
我もそなたが入信してくれたことを喜ばしく思っておる。
引き続き、よろしく頼むぞ」
優しい信者に恵まれた幸せを、どう言葉に表せばよいのか。
靄のかかっていた心は、完全に澄み渡っていた。
もし、この度のことで不況を買ったとしても、行ってしまった以上は誠意をもって対応するしかあるまい。
今後はもっと信者たちと語らい、それぞれの意向を日ごろから確認しなければ。
お主たちに心から認められるよう、我も精進せねばならぬ。
そして後日、グレユルトレから異端者の受け入れについて相談を受けた。
心根の優しい彼でも、信仰に懐疑的な者を迎え入れることには迷いがあるようだ。
だが、救いを求めているのであれば応えてやらねばなるまい。
先日、我が彼に救われたように。

ただし、少々手荒くはなるがな。

教化輪に現れた異端者は、自由になるや否や近くの信者たちにでまかせを吹き込み始めた。
あわてて王冠から鎖を伸ばし、拘束する。
そのまま教会裏まで運び、首枷に捕えた。
ここから連日説教を続け、改宗を促すのだ。
「この教団信じられない!」
「幸せ~」
「やっぱり信じられない!」
我も信じられない、これが入信5秒のうちに起きた心境の変化だなんて。
まあ、情緒不安定だからこそ、心の安全基地として信仰を必要としているのだろう。

その後・・・
出張や書類整理が重なるなどして多忙を極めた我は、この者を3日3晩首枷につないだまま放置してしまった。
心配した信者から処遇の伺いを立てられたことで思い出し急ぎ様子を見に行くと、3日前異端だった者は「恐怖した犯罪者」と化していた。

「も”う”ッ、き”て”く”れ”な”い”と”ッ、思”っ”た”ッッッ」
鼻汁と涙でぐちゃぐちゃな顔を見たとき、心の底から焦った。
・・・いや、マジでごめんて。