それはさておき

脱力して生きていきたい

Cult of the Lamb(カルトオブザラム)日記14~幕間:使徒としての覚悟

Cult of the Lamb(カルトオブザラム)日記13のつづき
※カルトオブザラムのゲーム日記、だったのですがゲーム内容を基にした二次創作の小説風にしてしまいました。
※注意! スカあり
※設定を想像で補完しているところがあります。
※主人公の性格設定は見た目は子ども、中身はジジイです。

使徒としての覚悟

 
 お主が特殊な性質を持つことは、すでにわかっておった。
 
 アガレスの魔眼が歌った「ブレナブレが好きなのはウンチ!」はすでに教団内のミームとして定着していたし
 

 
 カラマールから病気をもらったときも、目を輝かせておった。
 

 
 たいてい、ウンチを見たあとは上機嫌だったしな。
 なぜわかるのかだと? 今さら心を覗かずともわかるわ。
 

 
 はあ、このような趣味を続ければ、いずれ取り返しのつかない事態になることはわかっていた。
 お主の暴走を止めるのは我の役目だと理解していたのに、この結果を招いてしまったことは、痛恨の極みだ。
 
 なぜ説教されているのか、わかっておるのか? ブレナブレよ。
 
◆◇◆◇
 
 少し調子が戻ってきたか。
 大きく体を伸ばし、筋肉の緊張をほぐす。
 そのまま上半身を回すと、パキ、ポキ、と骨が鳴った。

 シャムラを滅してから、すでに三日が経過している。
 聖戦は終わりを告げ、我に残された使命はあと一つだけとなった。

 ストレッチを終えたあとは日課の見回りだ。
 汗ばむほどの陽気の中、作業場を順に巡る。
 皆それぞれ熱心に手を動かしたり、祈念したりしている。
 とはいえ、信者が増えたことにより、以前のような目が回るほどの忙しさはなくなった。
 作業の手を休め、雑談に興じる者もいる。

 平和な一日を象徴するような、のんびりとした空気の中、使徒に任命したばかりのブレナブレだけが、なぜか思いつめていた。
 「教祖様!」と駆けこんできた彼の目は、決意に燃えている。
 
 「私はまだ、使徒としての覚悟を示しきれていません!」
 

 
 ブレナブレはヴァレファール同様、教団が若芽のころから入信している古株だ。
 長きにわたり信仰を絶やさず、教団運営に力を注いできた忠実な信者である。
 人並み以上の熱意を持って仕事に取り組んでくれているのだが、少々気にかかるところがあり、つい最近まで任命を保留していた。
 
 ――それは、誰もが引くほどのアブノーマル嗜好の持ち主であることだ。
 
 しかし、待ち受けし者との面談を控え、わが身もどうなるかわからぬ状況。
 指導できる立場の者を増やしておくことは当然のリスクヘッジだ。
 万一のことがあっても、外部との交流を持つ使徒ならば、信者たちの身の振り方を整えてくれるだろう。
 そう考えた末の決断だった。
 
 衆目も認める変態から「覚悟を見せる」と言われ身構えていると、ブレナブレは意外にも「忍耐で忠誠心を示す」と言ってきた。
 
 「私を首枷にはめてください!
 忠誠心を証明して見せます! 
 3日間生き延びてみせましょう!」
 

 
 首枷などせずとも、長き付き合いで彼の忠誠心は疑いようもなく伝わっている。
 そう告げても引き下がる気配はなく、荒い鼻息で懇願してくる。
 仕方がない、それで気が済むならよいだろう。
 
 日の差し込まない、常に湿気を帯びた教会裏。
 その一角にひっそりとたたずむ首枷には、最近使っていなかったせいかコケが少し生えていた。
 彼の首と手首を板の間に挟め、外れないよう鍵をかける。

 「では、3日間見事やり遂げてみせよ」

 彼はこれから、昼なお暗いこの場所で、孤独と苦痛に耐え続けることになる。
 
 
 熱量に押され願いを聞き入れてみたものの、身体の自由を奪われるのは、普段から奔放に過ごしているブレナブレにとって辛いことだろう。
 同じ体勢で立ち続けることによる足への負荷も大きい。
 
 ふとしたときに彼のうなだれた姿が頭をよぎり、落ち着かない。
 変態とはいえ、罪を犯したわけでもない。
 「使徒のブレナブレが首枷に捕えられている」と聞いた信者たちの間に、疑心も生まれ始めている。
 

 
 思案に暮れていると、「教祖様」と遠慮がちに声を掛けられた。

 「ん、おお、ジャアンタイか。
 すまぬ、考え事をしておった」

 「いえ、こちらこそお忙しいところ申し訳ございません。
 実は、使徒を首枷に繋げたという話を耳にして、気になって近づいてみたのですが・・・教会堂の裏から怪しいうめき声が聞こえてきまして、皆が気にしております」

 少し離れていても聞こえるほどの、うめき声。
 いくら本人の願いとはいえ、やはり無茶であったか。
 度が過ぎた要求を止めるために我がいるのに、なぜ聞き入れてしまったのか。
 
 急ぎ引き返しくだんの場所に近づくと、ブレナブレの苦しそうな息遣いが聞こえてきた。
 ああ、すまないブレナブレ。
 我がもっと早くに決断していれば――。
 
 「・・・すっご・・・ガチガチ・・こんなに・・興・・・放置・・・もっと・・・」
 
 
 ?!?!?!
 
 急ぎ開放すると、ブレナブレは赤く腫れた首をさすりながらも、不満げな様子を隠せない。
 我の慌てぶりを見て一緒についてきたジャアンタイの、冷めた視線が突き刺さる。
 
 「や、やりきりましたよ・・・」
 

 
 「ですが、まだ1日も経過していません!!」

 再度拘束してくれと懇願するブレナブレに「お主の忠誠心はよくわかったから」と言い聞かせ、逃げるようにその場をあとにした・・・。
 

◆◇◆◇
 
 あくる日――
 
 「まだまだ、認められるわけにはいきません!」
 
 なんて? もう我、認めるって言ってるよ?
 
 「あなたのためであれば何でもしますよ。
 例えば・・・ウンチを食べます!」
 

 
 来た。
 
 「私にウンチを食べさせてください!」
 
 「・・・いくらお主が特級呪物だからといって、体調を崩さないということはないのだぞ」
 
 こんこんと説いても引く様子は一向にない。
 いよいよ根負けし、仕方なく作ってやると、ブレナブレは目を輝かせ、むさぼるようにスプーンを運かし続けた。
 
 そして・・・
 



 
 案の定、トイレと友達になった。
 
 間に合わなかったことを詫びながら、試練をやりとげたブレナブレは「ウンチを・・・ウンチを、食べましたよ・・・!」と誇らしげに報告してきた。

 「報告はいいから早く横になれ」

 下した腹を抱えながら、ブレナブレはよろよろとテントへ歩いて行った・・・。
 

 

◆◇◆◇
 
 さらにあくる日――
 
 「あなたの使徒として、あなたの言葉を世界に伝えましょう。
 異端者たちを改宗させる遣いに、私を出してください!」
 

 
 「体の調子はもうよいのか?」
 
 「問題ありません!」

 我を見上げる視線には活力がみなぎっている。
 1日で回復するとは驚きだ。
 さすが、ウンチ愛好家なだけはある。
 だが・・・。

 「信者獲得より、もっと難易度の低い食料や木材の供給にせぬか?
 ちょうど木材が足りなくなってきていたところだ。
 体調が戻ったとはいえ、病み上がりでもある。
 それに、お主にまかせると、その・・・我が説く教義が違った方向に進む気がしてならないのだが」
 
 「真の使徒として!
 あなたの教えを広めます!!
 私のことは心配しないでください!!!」
 

 
 お主のこともそうだが、それ以上に教団の品位を我は心配しているのだが。
 
 「そこまで言うなら、わかった。
 お主もわが教団に身を置き長い。
 体の隅々まで教義がゆきわたっていることを鑑みれば、そなたほど宣教にふさわしい使徒はいないかもしれぬ。
 くれぐれも自己流にアレンジすることなく、教義を広めてくるのだぞ」
 
 
 そして3日後――
 
 
 「宣教に失敗してしまいました。どうか、私のことを覚えていてください」
 

 
 教団に帰ってきて安心したのだろう、我への報告を済ませると、やつれ果てたブレナブレはその場に崩れ落ちた。

 宣教先で異端者たちに暴力を振るわれたのか。
 熱心な彼のことだ、夢中になるあまり危険な場所まで深入りしてしまったのかもしれぬ。

 すでに呼吸を止めた体を検分するも、傷は見当たらない。
 外傷がないとすると、毒物か。
 ――いずれにしろ、可哀そうなことをしてしまった。
 
 ブレナブレを墓に入れ、静かに手を合わせると涙がほほを伝った。
 何だかんだで我は、少々変わり者のお主が可愛くて仕方がなかったのだ。
 
 
 しばらくのち――
 
 
 ブレナブレと旅先で知り合ったという信者が入信してきた。
 
 「おもしろい人がいるし、楽しいところかなってwww」というノリの陽キャであったが、二人が出会ったのは過激な女王が支配する仕置きの盛んな国だったそうだ。
 

 
 そのような危険な場所にまで宣教に向かっていたとは、あのような倒れ方をするのもむべなるかな。
 ブレナブレよ、お主が命を賭してまでまいた種は、確かに芽吹いたぞ。
 
 「え? ブッチーパラっちゃったんスか?
 うーん、プレイ自体はハードだけど女王様プロじゃん?
 それは原因じゃないんじゃないかなあ」
 
 「パラったとはパライソ(天国)へ行ったということか。
 そんなことよりプレイとは何だ? プロ?」
 
 「ブッチー、マジスカってんじゃないスかww
 利きスカとか言ってかなりモグってたしね~食べ合わせ悪かったんじゃね?www
 ウケるwww」
 
 

 
 
 ・・・ブレナブレを説教するため、我は蘇生の準備を始めた・・・。